過保護な君の言うとおり



「ああ、佐久間。……起こしたか?」


といつもより舌足らずな言い方に胸を撃ち抜かれた。



「佐久間って呼ぶんだ、優じゃなくて」


僕はクスッと笑い、持ってきた羽織を玲ちゃんの肩にかけた。


「もしかして、さっきの聞いてたのか」



玲ちゃんはかけた羽織を落としそうになるくらい驚いて、そして目をまん丸にさせて、僕を見返した。




「我慢してたご褒美だと思ってたんだけど」


「なんだよご褒美って」



好きな子が同じ布団で眠っているのに何もしなかったなんて、本当に僕は偉いっと心の中で褒めた。




 一月の風は突き刺すように寒かった。




早起きな彼女と、目が冴えて仕方ない僕は新たな始まりを迎えようとしている街を見下ろした。



一年が終わると新しい一年がまた始まる。何かが終わる時、また何かの始まりでもあるのだ。


< 117 / 119 >

この作品をシェア

pagetop