過保護な君の言うとおり
「あ、優!」
玲ちゃんは僕の名前を呼んで、ベランダに乗り出し遠くを指さした。
「見て、夜明けだ。夜明けがきた」
玲ちゃんの指の先には、朝日の頭がのぞいて、明るいところが紺色の深い闇を少しずつ押し出していく。
玲ちゃんはキラキラした目で無邪気に日の出を見ていた。
僕にはそんな彼女が眩しく、煌めいて見えた。
今の彼女には儚さと同じくらいのずっしりと腰を下ろした燈がある。
「夜明け、とても綺麗だよ、とてもあったかい、佐久間、どうしよう。……よくわからないけど、泣きそうだ」
玲ちゃんは興奮しながら僕を伺った。瞳は潤んでいた。
「今の私たちは、同じ景色を見れているだろうか」
「うん。僕たちは同じものを見て、同じように感動しているんだよ」
僕と玲ちゃんは夜明けの静かなことの始まりに耳を澄ませ、じっと同じ方向を向いて、やがて上りきる太陽を見ていた。
──────fin.