過保護な君の言うとおり
昼休み、私は旧校舎裏の中庭のベンチで昼寝をしていた。
どうにも教室の空気が肌に合わない。
息が詰まるし、沢山の人の声が、足音が喧騒として、じんじんと頭の中を跋扈し頭が痛くなる。
少し冷えるとはいえ、ここのベンチは、あそこにいるよりはずっとましだった。
うつらうつらと、夢の世界に入りかけていた時、何人かの人の声が聞こえた。
滅多に旧校舎にひとがくるはずない。来るとすればそれは、何かやましいことをする時くらいだ。
声はだんだんと近づいてきた。
向こうからはベンチで寝転がる私は見えない。ちょうど私を覆い隠すように大きな木が一本生えている。
「なんかさっき先生に呼び出されたんだよね」
聞いたことのある声だった。
「そうですか」
「私がなんで呼び出されたかわかる?」
「……いえ」
「委員長、あんた先生に告げ口したでしょ。私たちがこき使ってるって、被害妄想もいいとこなんだけど」
何やらドンという鈍い音と「きゃっ」という短い悲鳴が私の耳に届いた。
話しているのは恐らく委員長とクラスの女子2人だ。今話していたのが背の高い皆川さんだ。
「それだけじゃないよ、あんたの机に落書きしたのも私のせいみたいに言われたんだけど」
これは恐らく品野さん。
私はぼんやりと無駄に天気のいい空を見上げながら、声だけを頼りに三人のやり取りを聞いていた。
「だって、見たんだも……」
委員長の声が途中で途切れ品野さんが
「お前の見間違いに決まってるだろ!」
と被せるように罵倒した。
委員長は殴られたのか。うめき声が聞こえた気がする。