過保護な君の言うとおり
品野さんなんで泣いてたんだろう。
というか、委員長までなんで泣いてるんだよ。
「なにめそめそしてんだよ。そんなとこ座ってると余計に汚れるぞ」
「……ダメだったんです」
上擦った声で委員長が言った。
「宮代さんに使いっ走りって言われて、これじゃダメだって思って……先生に言ったんです。
落書きのことや、言うことを聞かなかった時は悪口を言われること。
でも、裏目に出てしまいました……」
私はすっかり呆れてものも言えなかった。
先生に言えばなんでも簡単に解決してもらえる。なんてこと絶対にない。
助けを求められた先生は、体裁を整えるための形だけの対処しかしないだろう。
そんな中途半端な対処じゃ事態が悪化することなんて、目に見えてるじゃないか。
「人に全部任せて、それで解決すると思ったのか? 自分は何もしなくて助かるなんてことはないぞ」
私は委員長に背を向けてベンチへ戻ろうとした。
「でも!」
委員長の袖を引かれ私はつんのめった。
「宮代さんみたいに強くないから……」
泥だらけの制服は、目も当てられない。
「自分で変える努力を怠っている奴に言われたくない」
「……そ、そうですよね」
委員長は泣き笑いのような顔で言った。
「ごめんなさい」
使いっ走りにされていた時と全く同じ笑顔で微笑まれ、私は嫌な気持ちになった。