過保護な君の言うとおり
「……あの野郎」机には念を押すように落書きがあった。
『絶対、図書委員に手を挙げるように』
『じゃないと僕が悲しむよ!』
結局、私はまんまと乗せられ、図書委員に決まった。
どうにも佐久間は私を乗せるのが上手い。
───家に帰ると秋子さんはまだ帰ってきていなかった。
最近、仕事が忙しいらしい。
海外の支店でトラブルが起きたらしく、秋子さんは来週から一ヶ月ほど海外に出張へ行くことになった。
一ヶ月ってすごく長い。
秋子さんはとても私のことを心配していた。
でも、私は秋子さんの方が心配だった。
私を引き取る前は海外で仕事をしていた秋子さんだけれど、
日本よりよっぽど治安の悪い海外に、秋子さんが一ヶ月もの間滞在するのだ。
大丈夫なのだろうか。
無性に泣きたくなるような不安があった。
秋子さんは私にとって唯一無二の大切な人。私はこの人に見限られたり、離れていってしまうことが何よりも怖かった。
それがいつも恐怖として付きまとっている。
大切な人を作ることは、私をとても弱くさせる。