過保護な君の言うとおり
「お前も物好きだなあ。そんな立派なもんじゃないのに」
玲ちゃんが小さく笑っていた。
初めて見る笑顔に僕はドキッとした。
その笑顔は上品とか可愛いとかそういう類のものではなく、儚くて神秘的な趣があった。
「でもまあ、褒められるっていうのは案外悪い気はしないもんなんだな。
そういう言葉って何回も人から言われたことがあるけど、嬉しいと思ったのは初めてかも知れない」
「そ、そう。よかったよ……」
小池は頬を赤らめている。
そんなのを見て、僕はもう我慢できなくなって「玲ちゃ〜ん!!」と言いながら駆け寄った。
おまけに玲ちゃんに抱きついて小池を威嚇する。
どうだ、小池。お前はこんなことできないだろう、と念を込めて小池を睨みつけた。
「く、苦しいっ。お前、力加減がバカなのか!?」
玲ちゃんは僕の腕の中でもがいていた。小柄な彼女をすっぽりと覆うような形だ。
玲ちゃんからふんわりと優しい匂いがする。
この子が男を惑わすのはこの香りのせいなのでは、と思ったりした。
ちょっと腕を緩めると玲ちゃんは僕の腕からするりと抜け出した。
「病み上がりに対する態度だとは思えん」
玲ちゃんはぷうっと頬を膨らませる。またそのギャップがとても愛おしい。
「ごめんごめん。僕のために図書委員になってくれたと思うと、嬉しくて」
「どの口が言ってんだか。佐久間が私に頼んだんだろ」
やっと僕と玲ちゃんの二人だけの世界になったと安堵した時、
「あの……」小池が恐る恐る口を挟んだ。