過保護な君の言うとおり


 私が立ち止まると佐久間は足を止めて振り返った。



「どうかした?」


「佐久間が私を助けた理由はなんだ、しかも見舞いにまで来るなんて……。何か理由があるんだろ?」


「ないよ。帰り道に通りかかって揉めたみたいだから止めに入ったし、

君が目の前で倒れたから救急車を呼んだ。

それらに理由なんて必要ないよ」



 佐久間が当然のように言ってのけるから、私もそういうものなのかもしれないと納得しかけた。



長い間そんなことは無いと突っぱねていたものをこいつに改めて説明されると、

いとも容易く受け入れられた。


そういう人もいるのか、と。



「病院で少し話したんだけど、玲ちゃんの叔母さんはとても心配していたよ。

君に優しくしてくれるだろう、それで何か見返りを求めたりしたか? 

お返しを期待して君の心配をしているのか?」



「……違う。秋子さんはそんな人じゃない。私に見返りを求めたことなんて……一度もなかった」


 秋子さんみたいな人、秋子さん以外に見たことがない。


優しいって言葉は秋子さんのための言葉くらいに思っていた。


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