過保護な君の言うとおり



私は佐久間をうじうじと疑っていたのがバカバカしくなって、つい笑ってしまった。




「え、今……玲ちゃんが笑った」


佐久間はすごいものでも見たような顔で私を見た。


「ああ、私も佐久間みたいに笑えたらいいんだけどな……羨ましいよ」


ほとんど無意識に出た言葉だった。


佐久間の笑顔は脳裏に残って、人の気持ちを溶かす。そんな力があるように思う。



それはやっぱり才能で、誰にだってできることじゃない。



秋子さんや佐久間は、素敵な笑顔という、才能の持ち主なのだと思う。


いいなあとか、凄いなあと羨む気持ちはあるけれど


「まあ、佐久間みたいに笑える自分は想像出来ないなあ」というのも正直なとこだった。



「え! 僕みたいって!?」

佐久間が前のめりになって、声を高くする。


ただの独り言に思ったより佐久間が食いついてくるので、私は「なんでもない」と咳払いをして気を取り直す。


佐久間みたいに猪突猛進に関わってくる人間が今までいなかったから、私は戸惑っている。



それに、多分だけど佐久間なら……という思いも少なからずあった。




今まで扉に背を向けて立っていた私が、扉に向かって、それもドアノブを掴んでいる。



つまり、心を開きかけているのは確かだ。




じゃないと、私はわざわざ相手の真意を探ることなんてしないだろうから。


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