過保護な君の言うとおり
翌日、目を覚ますと隣の布団が空っぽだった。
そうだ、今日から秋子さんは出張に行くんだ。
時間はまだ、朝の五時。
あたりが真っ暗な時間。1寸先は闇に包まれているけれど、この部屋には私一人だというのは感覚で分かる。
私は引き取られて以来ずっとこの寝室で秋子さんと二人、布団を並べて寝ている。
それに慣れてしまっているからなのか、目覚た時、隣に人がいなくなっていると、妙に寂しい気持ちになってしまう。
孤独感にめっぽう弱く、一人になるとなぜか「私はこのまま消えて無くなってしまう」という感覚が、私に押し寄せて、不安にさせる。
こんな性格なのに、私はとても臆病なのだ。
扉の隙間から一筋の光の線がこちらに向かって伸びていた。
私は起き上がりリビングへと出ると、大きなキャリーバックを持った秋子さんが家を出る支度をしていた。
「早いね、もう行くの?」
「あら、起こしちゃった? 私もう行くけれどちゃんとご飯食べるのよ? 今日の朝ごはんは机に置いてあるから食べてね」
出る直前になって色々と思い出した秋子さんは次から次へと心配事を並べる。
「あとはねえ、戸締りしっかりして、お金はいつもの所だから……。
ああ、やっぱり心配だわ!
行くのやめちゃおうかしら」
玄関であれやこれやと考えている秋子さんに「もう、大丈夫だから。こまめに電話するから心配しないで」と笑って見せる。
大切な人の足枷にはなりたくない。