過保護な君の言うとおり
この頃は肌寒くなった。
北風が吹いて木の枝が凍えててるみたいに葉を落としているのを見ると、冬めいてきたと感じる。
今日は図書委員の当番の日だった。
昼はさっさと済ませ図書室に行くと佐久間はまだいなかった。
まさか忘れてるんじゃないだろうな。
まあ忘れていてもそんなに人は来ないから一人でも十分やれるけれど。
私は静かに本でも読んで待っていた。
すると、
「ねえ、優〜。放課後遊ぼうよ、今日はなにも用事ないって言ってたじゃん!」
と甘い女の声が廊下から、次第に図書室に近付いてきた。
図書室に入って来たのは佐久間と見たことある隣のクラスの女子だった。彼女かと思ったが、そうじゃないことはすぐに分かった。
私は余計なことには首を突っ込みたくないので、知らない顔をして受付でのんびりと話を聞いていた。
「僕もう行かなくちゃいけないから。また今度ね」
佐久間はその女を押し出すように廊下へと追い出すが、女はなかなか食い下がらない。
「ええ〜。いつもそう言って来てくれないじゃん」
「僕好きな子がいるから女の子とは遊ばない。誤解されたら嫌だし」
素っ気ない口調で話す佐久間は初めて見た気がする。
だいたいニコニコと笑顔を振りまいているイメージだったがそういう表情もするのか。
「なにそれ、別に優のことそういうふうに見てないし!」
となんだか知らないが女は憤慨して走って、どっかへ行ってしまった。
そういや、佐久間の下の名前は優だったなとぼんやりと思った。