過保護な君の言うとおり



 私の言葉にすっかり固まってしまった佐久間だったが



「でも、まあ」と言い足すと次の瞬間には、はっと息を吹き返したようだった。



「でも……?」



ワクワクと期待した目で見つめられると私は天邪鬼なので、ちょっと意地悪なことを言いたくなる。



「そんなに嫌いじゃない。私に話しかけてくるやつって大概ろくなことがないけれど、佐久間はなんか犬みたいだ」



「い、犬……? えっと、それっていいのかな」


「これでもお前のことを、褒めてるんだが」



これは本心だ。


悲しい時でも疲れている時でも、いつでもふとしたときに犬はそっと慰めてくれる。



施設にいた犬に佐久間は似ていた。




「人懐っこい犬みたいで、ちょっと可愛いかもな。これが情ってやつかも」


「……それが愛情だったらどれだけ嬉しいか」ボソボソと佐久間が話す。




 すみませーんと受付に一冊の本が置かれた。



それを佐久間が受け取り、私は学籍番号の書いてあるバーコード表をめくった。


その時に紙が指をかすめ少し血が滲んだ。




 大した怪我ではなかったので



「返却日は来週の火曜までです」と何事もなかったようにそう言った。



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