過保護な君の言うとおり
しかし、生徒が出ていくと同時に佐久間が「ひいっ」とこっちがびっくりするような声を出した。
視線は私の指に向いていた。
「玲ちゃん!!! 血が出てる! 大変だよ、えっと、えっと絆創膏……」
オロオロとする姿は出張に出かける前の秋子さんと同じだ。
「お、落ち着けよ。ちょっと切っただけだから」
少しの切り傷も見逃さない佐久間は、目がいっぱいついてるんじゃないかと思ったくらいだ。
爪の先まで目がついているんじゃないか。
指を切った本人よりも慌てふためいている。
佐久間は財布の中から絆創膏を取り出した。
「僕が巻いてあげるから、じっとしてて……」
「どーもありがとう」
私は大人しく指を差し出した。佐久間の手は細いけれど、確かに男の人の手だった。
優しく優しく私の手に触れ巻いてくれるのはいいが、なんか、照れくさい。
あれ、胸がなんかぐっとなったぞ。
この症状の原因はなんだ。
佐久間の甲斐甲斐しい姿に見惚れてたのか?
いや、違うな。
忠犬のような姿に感激しただけだな。
「玲ちゃん?」
佐久間が私の顔を覗き込んだ。
「顔赤いけど……」
「い、いや何でもない。大丈夫だ」