過保護な君の言うとおり
その言葉を聞いた時、私の頭はすっと冴えた。
「知るか、うざいんだよそういうの。恩着せがましい馬鹿野郎が」
冷たく言い放った私に、男は声を荒らげた。
「……っくっそ、調子乗りやがって!」
男がついに拳を振り上げた時だった。
タッタッタッと軽快な足音と共に
「ちょっと何やってるんですか!」と向こうから制服を着た背の高い男が走ってきた。
茶髪の男は予期せぬ乱入者に驚き、尻もちをつきかねない勢いで後ずさった。
「物騒ですよ! 何してるんですか、女の子に」とすごい剣幕で駆け寄ってくるその人を見て、
茶髪の男はじりじりと後ろに下がっていき、ついには私を殴りつけることも忘れて一目散に逃げていった。
「ねえ、君、大丈夫!?」
助けてくれた男の人が問いかけてからやっと自分の状況に気がついた。
私は胸を押さえて蹲っていた。
「……っ」
息が漏れる。
「ええっと、こういう時って、どうするんだっけ……救急車、救急車だよね!」
私の喉からヒュッヒュッと息が漏れ、うまく呼吸ができなくなった。
胸をつねりあげられたような激しい痛みに、ついに私は倒れた。
オロオロと私を助けようと必死にスマホで話しながら、私の背中をさすっている男の姿を息苦しい視界から見る。
意識が朦朧としていて、こんなにも死にそうなのに
必死すぎる彼の行動に感謝するよりも先に、笑いそうになってしまった。