過保護な君の言うとおり
「どんどん、玲ちゃんの元気が無くなってる。僕、見てられないよ」
「……別にそんなの」
好きで食べてないんじゃない、喉に通らないんだ。
胸が詰まってご飯も食べられない。
原因になる心当たりなんか、わんさかあったし、いくらでも考えられた。
寝る時も隣に空いたスペースが気になって眠れない。
家がとても自分の家とは思えない、他人の家みたいに感じる。
秋子さんの不在がひしひしと身に染みているのだ。
自分は本当に孤独なんだと改めて現実を突きつけられていた。
何よりお前を避けていること自体に心が悲鳴をあげている。
「僕は心配だよ」佐久間は言った。
それに対して私は
「なぜ? それは押しつけか?」
とまたと酷いことを言ってしまった。
色んな過去の記憶が混ざりあって、誰の言葉を信じればいいか、分からない。
「……本当は心配してないんじゃないのか?」
───こんなことが言いたいわけじゃない。疑ってなんかない。これはただの酷い当てつけだ。
「なんで……なんで君はそういう風に言うんだ!」
佐久間の声が廊下に響いた。
「僕は君に何も求めない。
僕は君を好きだけれど、玲ちゃんも僕を好きになってなんて言わない……。
わがまま言わないから、だから……そばに居させてよ……」
そう言った佐久間は私をそっと引き寄せて包み込んだ。
少し高い体温がとても心地よく、心が暖かくなるのを感じた。
『わがまま言わないからそば居させて』
その言葉は、私の引き取り手がなく、施設に入れられた頃に大人たちに向かって全身全霊、心で叫んでいた言葉だ。
だから、その気持ちは私にもよく分かる。
私が人にこんなことを言わせてしまうなんて……心が痛んだ。
それどころか頭も痛く、不安定な足場の上に立っているような気になった。ぐらっと足元が揺らぐ。
───その時、私の全身からすっと力が抜けた。
意識がぷつんと途切れ、佐久間に抱きとめられる形で私は気を失った。