過保護な君の言うとおり
私は独り歩きながら、学校を出る前の佐久間とのやり取りを思い出す。
「僕は学校が終わったら、超特急で用意して玲ちゃんの家に向かうから」
と意気込んでいた佐久間に
「私はまだお前がうちに来ることを了承してないんだけど」と私は言った。
だって、客観的に見てどう考えても男と二人で暮らすなんておかしいだろうと思ったからだ。
「もう、強引に行くしかないかなって」
佐久間はそっぽをむいた。頑張って言い訳をさがしている、そんな感じだ。
「だって、僕が玲ちゃんのことを好きってだけで避けられるんだもん。
やってらんないよ。
だから、ここはもう強行突破で玲ちゃんに尽くそうと思ったんだ」
「佐久間……お前ってやつは」
到底思いつかない、突飛な発想に私はすっかり抗うことを忘れた。
「つくづく変な奴だな……何かを求めてくるやつは死ぬほどいたが、尽くそうと考えるのはお前くらいだ。そこまでするか、普通」
「やっぱり僕はおかしいのかなあ」
「自覚がないんだから相当だ」
「でも、もし迷惑なら言って。勢いだけでこういう流れになってるけど、無理強いだけはしたくないんだ」
真剣な顔で佐久間は言った。
佐久間が提示した選択は二つで、ひとつはこれまで通り秋子さんが帰ってくるまで一人で暮らす。
そしてまた倒れてしまわないよう、食事もしっかりとること。
そしてもうひとつの選択肢が佐久間が家に来ることだった。
私は………あの家にひとりで暮らし、寝起きする事がもう正直耐えられなかった。
情けないけど、寂しいのだ。
そうこう考えている間に家に着いていた。