過保護な君の言うとおり
佐久間は「やっぱり玲ちゃんのそういう所、すごく可愛い」と微笑んだ。
そして喜びを隠しきれないというように
「君の好きなおかきを買ってきたんだけど、住まわしてくれる?」
と首を傾けて、醤油のおかきを差し出してくる。
私が佐久間を手のひらで転がしているようで、実質その逆だ。私が佐久間のペースに巻き込まれて、引っ張られている。
───しかしそれも、そんなに悪くないのだ。
「正直なところ、私は料理が苦手だから助かるんだ。
この前作った時は……大惨事になった。
もう食べられたもんじゃないし、作りたくないから佐久間がいるととても良い」
「もちろん、僕は得意だから任せてよ。
でもまあ意外だよね、なんでも器用にやってのけそうな玲ちゃんが料理下手なんて」
「人間には得手不得手がある」
思い出しただけでも、嫌になる。
料理を一つ作るのに時間と手間を使ったのにもかかわらず、ゲテモノが出来上がったんだから。
「何作ったの?」
「ハンバーグを作った。
そしたら……すすだんごが出来上がってキッチンは大惨事。あんなのはもう御免だ」
「それちょっと気になるなあ」と佐久間がいつもの笑顔で笑った。
気づけば止まっていた家の中の時間が、息を吹き返していた。