過保護な君の言うとおり



 玲ちゃんはといえば、ソファーへと移動し手で顔を仰ぎながらスマホを触っている。



「……またあいつか」と玲ちゃんが呟く。
 


あまり気分の良さそうな表情じゃなかったけれど、誰かと連絡を取っているのだろうということは何となくわかる。



 誰だろう男か?……なんて探るようなことを考えてしまうのは、玲ちゃんにとって鬱陶しいことこの上ないとも思う。



それでも僕も人間だ。好きな人がもし男と連絡を取り合っているなら、それはすごく嫌だ。



「ん? なんだ佐久間、ぼーっとして」


振り返った玲ちゃんがのんきな口調で言う。


僕は首を振って苦笑いで

「あ、いや。なんでもないよ」と答えた。


頭の中でどんなことを考えているのかを見透かされている気がして、


玲ちゃんを直視出来なかった。



僕は時折怖くなる時がある。



玲ちゃんが実はなにもかもを、それも僕の醜い嫉妬心とか嫌なところを知っていて、


分かった上で見ていないふりをされている気がしてしまうのだ。




「もしかして、私に見惚れていたのか?」



 ソファーにもたれかかり、顔だけをこちらに向けて玲ちゃんはニヤリとしながら言う。


「なんてな、冗談だよ」


「……うん」


「……なんだ、大丈夫かあ佐久間? さっきから変だぞ」



 心配とは程遠い、不審な目つきで僕を見るのが、いかにも彼女らしかった。



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