過保護な君の言うとおり
「あ、そうか」と玲ちゃんは手を叩いて、少し古い閃いたという仕草をする。
「分かった。私は礼を言うのを忘れていたか」
彼女はこほん、と小さく咳払いして居直す、礼とはなんだろうかと思いながら僕も釣られて姿勢を正した。
「お前の作る料理はとても美味しかった、久しぶりにちゃんと味がした気がする。
ありがとうな、佐久間」
玲ちゃんは思い返してまた味わうようにしみじみ言った。どうやら彼女なりに僕に気を使ってくれているのだろう。
料理の御礼を言われてなくて凹んでいると思い込んだ玲ちゃんのその思考がとても可愛かった。
彼女は自分で考えて、相手の感情を読み取ろうと努力をする子だ。
僕の気持ちを慮る、そんな彼女が苦しいくらいに愛おしい。
「あれ、お礼じゃなかったか?」
玲ちゃんがとっても不思議そうな顔をして首を傾げていた。
僕はぶんぶんと手を振る。
「いやいや、本当になんでもないよ。でも、お礼は、素直に嬉しいな」
「そうか、私はもう寝室に行くけれど、佐久間は秋子さんの布団を使うか?」
玲ちゃんはいつも秋子さんと同じ部屋で寝ていると言っていた。
つまり、僕は今日から玲ちゃんの隣で寝ると言うことか?
「それは流石に……」
いくら、なにもしないと言っても危険すぎる。それだと僕は毎日寝不足になってしまう。