過保護な君の言うとおり
私は祈るように瞼を閉じた。
いつか佐久間の見ている景色と同じものを見ることは出来るのだろうか。
もし叶うなら、それはとてつもなく眩しい日差しが射していて、開けたそこは私には勿体ない程の美しい景色に違いない。
次第にまぶたの裏が明るく灯る。朝日が顔を出したのだろう。
「僕ね」と佐久間が言いにくそうに口を開いた。
「玲ちゃんが……突然消えてしまいそうで不安になることがある」
その声に私はゆっくり目を開けた。
佐久間がちらりとこちらを見て、眉を下げる。
「なんでかな、確かに君はここにいるのにね。僕の手をするりと抜けて遠くへ行っちゃいそうで怖いんだ」
「私がか?」
「変なことを言うなあと思ってるだろうけど……というか自分で言っててもおかしいなと思うんだけどね」
いつも以上に歯切れが悪い佐久間は、悩みがなんのフィルターも通さずに口から出たようだった。
「それは、単に考えすぎだろ」
呟いた声は風によって、かき消されてしまった。また私たちは外を見る。
その時間は、二人で心をチューニングしているような感じだった。
もう、佐久間を疑うことなんて全く無い。
だからなのか、私も佐久間と同じように、もし佐久間が私の元からいなくなってしまったら、と思うと恐ろしいのだ。
『考えすぎだ』
この言葉は私自身が安心するために言い聞かせた言葉だ。