過保護な君の言うとおり



 その時、部屋の中から電話がなった。




「こんな朝早くに?」



と佐久間が訝しみながら「僕が出るよ」と率先して電話を取った。



その電話は秋子さんからだったようで、佐久間は私に受話器を渡してきた。




 電話の向こうの秋子さんは、どこまでも申し訳なさそうだった。



「玲ちゃん、出張が長引きそうなの」



その言葉は少なからずショックだった。
少しでも私の我慢が足りなかったら早く帰ってきて、と口をついてしまいそうだった。



「……そっか、秋子さん頑張ってるんだね。無理はしたらダメだよ、こっちは大丈夫だから」



絞り出したように言ったので、無理してるように聞こえないか心配だった。

その心配をよそに秋子さんはいつものように上品に笑ってくれた。



頭の中には、ぱっと花が咲き誇ったような私の大好きなあの笑顔を思い浮かべた。



「無理しちゃだめって、学校で倒れた玲ちゃんに言われるなんて、なんかおかしいわね」


「確かに、私が言うことじゃないか」


「佐久間くんとはどう、上手くやってる? あんまり心配だから佐久間くんにお願いしちゃったけど」



「ああ、上手くやってる。なんでも出来る家政婦みたいで、もう凄いよ」




 私はちらっと佐久間を伺うように言った。



佐久間はわあわあと大きな欠伸をして、私が見ていることに気づくと



「はっ」と口を手で押え照れくさそうにはにかんだ。


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