過保護な君の言うとおり



「れ、玲ちゃん。この人は?」



佐久間が私と洸を交互に見て聞いてくる。その質問にどう答えたらいいものか迷った。



何故かって、もうとっくに上映が終わった昔の映画をもう一度映画館で見るくらい難しいからだ。


私はうまく説明できないから首をかしげる。




ただ、「ひとつ上の先輩」としか言えない。


「……違うだろ?」

 洸が眉をしかめ、私の顎を掴んだ。

「離して」

気に食わないと、すぐこれだ。私は視線を合わせないようにそっぽを向く。


「何してるんですか」


佐久間が間に割って入るが、洸は譲らなかった。敵意に満ちギラギラした目が佐久間をとらえる。



「そこの君が玲にとって安らげる場所なら、俺は玲が縋りつくような場所になってやるよ。
だからよーく、覚えておいてね、玲」


 洸はそれだけ言うと図書室から出ていった。

私は背もたれに身を預け、項垂れた。




 洸は穏やかにすぎていくと信じてやまなかった私の生活にひびが入れに来たのだろう。



さっきの態度を見れば明らかだ。



そこまで固執するのは私の責任なのだろうか。有耶無耶になったことで全て終わったと思っていたのに……。



 洸の出ていった方を険しい目で見つめる佐久間。



その袖をひくと「はっ」と意識が帰ってきたみたいにして、いつもの佐久間の顔に戻った。



「なあ佐久間、これからどうなると思う?」



「二人に何があったかはよく分からないよ。多分話してはくれないだろうし、それは別に重要じゃない。
でも、僕にとってあの人が都合の悪い人だってことは分かった」



 肩を竦めて佐久間は言った。


思ってたよりもあっけらかんとしていて拍子抜けする。



「なんだか余裕だな」


「まさか、そんなんじゃないよ」


佐久間は遠くを見つめ、


「ただ……君にあの人は似合わない」


と答えた。
 
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