過保護な君の言うとおり
どくどくと血液が心臓から送られるように、私の目からは涙が次から次へと溢れてきた。
佐久間は誕生日を知っていのだ。ケーキを買った帰りにこんな風に怪我を負い、なのにまだ「大丈夫だから」と笑顔をつくっている。
「れ、玲ちゃん?」
何が大丈夫なのだ。底知れない佐久間の優しさに涙し、傷ついた佐久間を見ると悲しくて涙が溢れた。
「ううっ……」
拭っても拭っても涙は止まらない。
佐久間が背中をさすり「大丈夫、大丈夫」と優しく言う。だから余計に溢れてくるのだ。
人は泣きたい時に優しくされると、かえって涙がでて、もうどうやったら止められるのかさっぱり分からない。
嬉しいから泣いているのか、佐久間を傷つけてしまったことに罪悪感を感じて泣いているのか、判然としない雫が顎をつたう。
とりあえず私は「甘いのは嫌いだあ」と嗚咽しながら言った。
「嫌いなのに……なんで嬉しいんだよぉ」
いつから泣いていなかったのだろう、吹き出すみたいに滔々と涙が流れ出る。みっともなく大泣きして、しゃっくりまででてくる始末だ。
佐久間は黙って私を引き寄せ「まいったなあ」と天井を仰ぎながら頭をぽんぽんと撫でる。
これで振り出しに戻れないだろうか、佐久間と病室で話した最初の瞬間に。
あの時にもっと突き放しておけば、私は佐久間をこんな風にしなくて済んだかもしれない。
「ごめんなさい、佐久間……傷つけて、ごめん、私のせいなの」
「大丈夫、君のせいじゃない」
「それをやったのは、洸なんでしょ? ねえ、ほんとのことを言って」