北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「あんたはなんでわたしには甘えてくれないんだよお」
 凛乃は小さな声で魂の雄叫びをあげた。
 つるにこの優先順位は圧倒的に累が1番で、凛乃は累がいないときのひまつぶしがいいところだ。
 累が気を使って凛乃をご褒美おやつ係に任命してくれたけど、つるにこに興味を持たれるのが、おやつのチューブを持ったときだけというのは、せつない。
 つるにこに対してだけじゃなく、つるにこに愛されている累にさえ嫉妬する。
「外で彼氏見つけたら累さんのことどうでもよくなったり……しないか」
 つるにこのおなかが、呼吸に合わせてふくらんではしぼむ。
 元野良猫だし、親きょうだいが外にいる可能性があるし、庭への出入りは自由にしている。累が少なくとも一度は出産させたがっていて、去勢手術をしていない。
 でもいまのところ、つるにこは外より累のそばにいるのが好きらしい。
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