北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「ごはんくれるからとか、住まわせてくれるからじゃないでしょ。累さんのやることなすこと好きなんでしょ」
 どっちも大好きで、どっちもにくたらしいほど妬ける。
「わたしだってねー、累さんに声をかけると、ん? って聞き返してくれるのが、すごい好き。ふだんよりちょっと低い声で、深くて、やさしくて、ちゃんと聞いてますよーって、こっちに意識が向いてて、話してごらん? って感じで促すような、そういう応えかたがすごく好き。だからつい、名前呼んじゃう」
 起きる気配もなかったつるにこの長いしっぽが急に伸び上がった、と思うと。
 ぱふん、と凛乃の頬を叩いた。
「なによ」
 ぱふん。
「なにさ」
 ぱふんぱふん。
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