北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 キッチンに逃げ込んで冷蔵庫に頭突きする。額がひやっとしたのは、それだけ全身が熱くなっているからだ。
 いまさら「本音がバレちゃった」、なんて思わないけど、つるにこに恋愛相談していたのを見られたのは恥ずかしい。
 背後で、リビングを塞ぐガラス戸が閉まる音がした。
 猫みたいに足音を立てずに近づいてきた累が、冷蔵庫に両手をついて、腕のなかに凛乃を閉じ込める。
「つるにこ、おれね」
 いつもそうしているように、愛猫を甘やかすトーンだ。
「凛乃が照れる顔を見るのがすごく好き。だから、どういうことを言えば、なにをしたら凛乃が照れるのか、最近そればっかり考えてる」
「うぅうぅ」
 凛乃は額を冷蔵庫につけたまま、両手で顔を覆って、ぶんぶんと頭を振った。
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