北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 ロングスカートにも手がかかり、たっぷり布を使ったギャザーをせっせとたくしあげた。
 あらわになった腿の側面を、猫の丸い背をなでるように手が行き来する。
 と同時に、カップの中でうごめく指先の性急さに、凛乃は口唇をむぎゅっと結んだ。
 膝をこすりあわせるように揺らいで、たまらず冷蔵庫に両手をつく。
 遠慮する手段がなくなった凛乃の肌に、遠慮なく累の手が伸びる。
「んん」
 首筋にかかる息は荒く熱いのに、聞こえるのは自分の喘ぐ声ばかりだ。
 ガマンしているのか、ガマンできる程度なのか。うらめしくて、凛乃は乱れた呼吸の合間にねだった。
「累さんも、声に出して」
 うなじへのキスが一旦やんで、ちゅ、と音を立てた。
「いつもとちがう匂い。いい匂いだけど」
 累の深呼吸が、髪に染み込む。
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