北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 ホテルのロビーに入りながら、凛乃を囲んでの興奮は鎮まらない。
「式はいつ?」
「いやいや、まだなんにも。順々にね」
「決まったらすぐ教えてよ? 真冬とか真夏以外にしてね」
「その着物、式でも着たら? 振袖って打掛にリメイクできるんだって。着終わったら元に戻せるらしいよ」
「そうなんだ?」
 聞き返す凛乃の声が1オクターヴ上がる。
 話の輪から外れてはいたけど、累は当事者のひとりとしてそれを聞いていた。
 このあいだ凛乃が言っていたことは、こういうことだったんだ。
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