北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 これって、どこかで見たな。
 そう、累がつるにこを撫でているときだ。
「考えたんだけど」
 累が遠慮がちに言った。「納戸に残りぜんぶ入ったんだから、もう片付けは終わったってことにならない?」
「それじゃあ約束が違います」
 強く抗議した。
「それに、荷物をほっといたら納戸に戻れないじゃないですか」
「戻るつもりだったんだ?」
「涼しくなったら」
「そんなに気にいった?」
 累の声がとまどっている。
「思い入れがあるというか、情が移ったんですよね」
 言ってから凛乃は唸った。
「でも季節ごとに部屋を移るのはたいへんだし、わたしが二部屋占領するのは……」
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