北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 このところの累が寝室に戻ってくるのは、意図したかのように凛乃が寝入ってからだ。しかも、おなじ布団に入ってこないで、隣り合った自分のベッドのほうに行く。
 仕事が立て込んでいたり、月イチのお客さんを迎えている夜は、そういうこともあった。
 先週はその両方がかぶって、ご要望にお応えできない申し訳なさがなくて気がラクだ、くらいに思っていた。
 でも、数えれば10日も触れあってない。
 まさか、もう飽きられちゃった?
 夜の寝室が累を唯一独占できる密着タイムだっただけに、不安がよぎった。
 呼吸のリズムを合わせている累とつるにこの姿なんて、見ていられない。
 やつあたり気味に布団を叩き下ろして、コタツの天板に手をついて背を起こす。
 その振動で、スリープモードだったノートパソコンが目覚めた。
 モニターに全表示されている画面に何気に目を走らせて、凛乃は「え」と声を漏らした。
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