北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「まだ仕事あるんじゃないの?」
「急ぎのは終わらせた。あとはのんびり」
「それならいいけど」
「どこか行く?」
 例のレストランの豪華な内装写真が頭をよぎって、凛乃は累の胸のうえにあった手を握りしめた。
「あのね、行きたいわけじゃないんだけど、年末、実家に帰って来いって言われてるんだ。お盆に帰らなかったから、しつこくて。30日から行って、1日の夜に帰ってこようと思うんだけど、いい?」
「うん」
「あっさり言うなぁ」
 ちょっとガッカリした。
 反対する理由もないんだからあたりまえだけど、ちょっとはゴネてほしかった。
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