北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「初夢は別々だね」
「2日の夜に見るのが正式らしいよ」
「じゃあ、いっしょに見れるね」
「うん」
「いっしょに初詣も行こ。元旦よりは空いてるよ」
「10年ぶりくらいかも」
「そんなに!?」
 凛乃は声をたてて笑うと、またくっつけるだけのキスをした。
 深くはないけど、角度や位置を変えて、雨のように浴びせる。
 累は目を閉じてまた眠ったように見えた。でも、誘いに乗るように、手がパジャマの表面を這いあがってくる。
 かさり、という音と感触に、凛乃はぱっと飛びのいた。
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