北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 撫でまわして確かめるまでもない。
 凛乃は手をそこに残したまま、顔を上気させて累の口唇をふさいだ。今度は深く、かき乱すように。
 触れた形がどんどんくっきりしてくる。
 ひとしきり凛乃にゆだねたあと、累は待ちきれないように慌ただしく凛乃の腰を抱きよせて、体勢を逆転しようとした。
 ごつっ、と音がして累の腰がコタツにぶつかる。
「っ!」
「みゃっ」
 激しい揺れに驚いたつるにこが、甲高く鳴いて布団から飛び出した。
「ごめん」
 累が真っ先につるにこに謝って、肘を支えに身体を起こした。
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