北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 すると累はコタツ布団をひっぱって、ふたりの重なる腰をふわりと覆った。
 たしかにギリギリ見えなくはなったけれど、その中では瞬く間に恥ずかしげもなく肌がさらされた。
 こぼれそうな声と格闘すればするほど、どうしても身体が熱くなる。
 口を両手で押さえても漏れるただならない声を聞きつけたら、つるにこは、きっと見に来てしまう。
 目が合いそうで、キッチンのほうを見ることも目を開けることもできない。
 凛乃は累に向き直った。
 その首に腕をまわして、ぐっと引き寄せる。
 キスをしているあいだなら、声が出ない。
 なのに累は、凛乃の息が切れると口唇を離れた。パジャマのボタンを胸近くの1つだけはずして、中を甘嚙みする。
 コタツからはみだす突っぱる爪先やのけぞる半身が、肌寒いような火照るような、こんがらがったままで、凛乃は最後の声を飲みこんだ。
< 146 / 317 >

この作品をシェア

pagetop