北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 言われて自覚する。
 ほんの半年ほど前まで感じていたそれは、いまではすっかり遠かった。
 それだけは、前向きに進んではいるということだけは、言っておこう。
 そう思って口を開こうとしたとき。
「みゃおーん」
「つるにこダメだってば」
 相次いでそんな声が、閉じたドアの向こうから聞こえてきた。
「ん、だれかいる?」
 あんなかすかな声が聞こえたのか、とっさに目を向けた累の仕草に気付いたのか、言造の顔が輝きだした。
「おい、そっちはもう真夜中だろ、そんな時間に家にいるって、しかもクリスマスだぞ。おい、ん?」
 ぐいぐい画面に寄ってくるニヤけ顔にせっつかれて、身体がのけぞった。
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