北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「おーい、そこにだれかいますかー」
「大きな声出すな」
「お、だれかいるのは認めるわけね」
 反射的にごまかそうとするのを、すぐに自分で拒否した。
 プロポーズし損ねたタイミングで隠したりなんかしたら、凛乃に不要な不信を抱かせかねない。
「ちらっと顔見せてくれるだけでいいからさ、ちょっと連れてきてよ」
「しつこいな」
 累はモニターを睨みつつ腰を上げた。
 反発はしても、この勢いに乗ってしまえという衝動もあった。
「質問は受け付けない。紹介だけ。わかった?」
「わかったわかった。ほれほれ」
 声に追い立てられてモニターから離れる。
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