北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「聞いてないんだけど」
「言ったらあんた来ないと思って」
「そうだよ。来ないよ。こんな騙し討ちみたいな手、使って」
「騙すって、あんたそんなガラの悪い言いかた」
「タチの悪いことしてるの、そっちだからね」
ヒートアップする維盛親子の向かいで、田淵母がおろおろしている。その息子は面倒ごとは避けたいとでもいうように、ひっそりとコーヒーをすすりはじめた。
つまり、ほとんど母親同士の暴走だ。凛乃は、“凛乃だから請われた”わけじゃない。
「言っとくけど」
決定打を出して終わらせる。
「わたし、結婚しようと思ってるひといるから」
「えっ、うそだ、聞いてない」
「言ってないからね」
「なんで言わないんよ」
「言ったらあんた来ないと思って」
「そうだよ。来ないよ。こんな騙し討ちみたいな手、使って」
「騙すって、あんたそんなガラの悪い言いかた」
「タチの悪いことしてるの、そっちだからね」
ヒートアップする維盛親子の向かいで、田淵母がおろおろしている。その息子は面倒ごとは避けたいとでもいうように、ひっそりとコーヒーをすすりはじめた。
つまり、ほとんど母親同士の暴走だ。凛乃は、“凛乃だから請われた”わけじゃない。
「言っとくけど」
決定打を出して終わらせる。
「わたし、結婚しようと思ってるひといるから」
「えっ、うそだ、聞いてない」
「言ってないからね」
「なんで言わないんよ」