北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 一応謝ったけれど、田淵母は凛乃母を気遣ってか、曖昧にうなずく。息子のほうは窓の外を眺めて、もう他人事みたいだ。
 それでも凛乃の視線に気づいて、横目でちらりとこちらを見る。
「恥ずかしい娘を押し付けられなくてよかったですね」
 母親に聞こえるように、凛乃は笑みを浮かべて言ってやった。

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