北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
せめてこの強行軍にメリットがあるようにできないかと、凛乃はとっさのアイデアをひねり出す。
「あのね、うちの近くに温泉が湧いてて、温泉街ってほど大きくないけど民宿とかホテルがあってたいてい日帰り入浴できるから。着替え持ってきて。さっぱりしてって」
「ん」
累の声が、考え込むように遠く聞こえた。
人見知りの累が、針の筵とわかっていて来てくれる。
それを想うと、胸が痛んでじりじりする。拒否されるのも覚悟していただけに、身体が火照るほどありがたくて拝みたくなる。
だからわたしが全力で守る。
両拳をにぎって気合を入れたとき、改札の奥の雑踏の中に累を見つけた。目頭が熱くなって、思わずぎゅっと口唇を噛む。
大きく手を振ると、累もすぐに気づいて軽く手を挙げた。
「ありがとう!」
累が改札を抜けるなり、凛乃は駆けよって手を取った。
「あのね、うちの近くに温泉が湧いてて、温泉街ってほど大きくないけど民宿とかホテルがあってたいてい日帰り入浴できるから。着替え持ってきて。さっぱりしてって」
「ん」
累の声が、考え込むように遠く聞こえた。
人見知りの累が、針の筵とわかっていて来てくれる。
それを想うと、胸が痛んでじりじりする。拒否されるのも覚悟していただけに、身体が火照るほどありがたくて拝みたくなる。
だからわたしが全力で守る。
両拳をにぎって気合を入れたとき、改札の奥の雑踏の中に累を見つけた。目頭が熱くなって、思わずぎゅっと口唇を噛む。
大きく手を振ると、累もすぐに気づいて軽く手を挙げた。
「ありがとう!」
累が改札を抜けるなり、凛乃は駆けよって手を取った。