北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「うん」
微笑む累は、やっぱり少し緊張しているようだ。
入り乱れる人波を横切りながら、凛乃は累の涼し気なうなじを見上げた。
「髪、切ったんだ」
「サスケがぜったい切ったほうがいいって言うから。行きつけの店、開けてもらって」
前髪の長さはぎりぎりまで残したものの、サイドからうしろにかけて、さっぱりと刈り込まれている。
凛乃が選んだスーツと最近新調したばかりのチェスターコートを着込み、いつもジャージの類を着た職業不詳人物とは思えない颯爽とした佇まいだ。
手にした紙袋は東京土産、見たことのないトートバッグは佐佑からの借りものだろう。
むりやりな呼び出しにもかかわらず、凛乃の両親に会うために累は、できるだけの対策をして来てくれた。
凛乃はつないでいる手を強くにぎりしめた。
もしも反対されたなら勘当上等の覚悟でいたけれど、そうはさせない。
累が示そうとしている誠意を、踏みにじるわけにはいかない。
微笑む累は、やっぱり少し緊張しているようだ。
入り乱れる人波を横切りながら、凛乃は累の涼し気なうなじを見上げた。
「髪、切ったんだ」
「サスケがぜったい切ったほうがいいって言うから。行きつけの店、開けてもらって」
前髪の長さはぎりぎりまで残したものの、サイドからうしろにかけて、さっぱりと刈り込まれている。
凛乃が選んだスーツと最近新調したばかりのチェスターコートを着込み、いつもジャージの類を着た職業不詳人物とは思えない颯爽とした佇まいだ。
手にした紙袋は東京土産、見たことのないトートバッグは佐佑からの借りものだろう。
むりやりな呼び出しにもかかわらず、凛乃の両親に会うために累は、できるだけの対策をして来てくれた。
凛乃はつないでいる手を強くにぎりしめた。
もしも反対されたなら勘当上等の覚悟でいたけれど、そうはさせない。
累が示そうとしている誠意を、踏みにじるわけにはいかない。