北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
凛乃は自宅ですでに着付け済みだった。黒地に花柄の着物と深い赤の羽織は、落ち着きを醸しながらも華がある。民宿の玄関で出迎えたときは母親のうしろにいたから、いまやっとじっくり見られた。
頬がゆるむのに、いい称賛の言葉が出てこない。
凛乃も指先で口元を押さえて、にこにこと見つめ返すだけだ。
「ほら、行ってきなよ初詣」
母親と女将に追い立てられると、凛乃はソファに置いてあったものを手に取る。
「外寒いから、これ、よかったら」
2本のマフラーのうち、バックパッカーが選んだのは、茶系の着物を引き締めるような黒いシンプルなものだ。
累はカラフルなマフラーを借りて、首にぐるぐる巻きにした。パッチワークみたいにつながったいろんな色が、着物と羽織の渋い濃紺と引き立て合う。
頬がゆるむのに、いい称賛の言葉が出てこない。
凛乃も指先で口元を押さえて、にこにこと見つめ返すだけだ。
「ほら、行ってきなよ初詣」
母親と女将に追い立てられると、凛乃はソファに置いてあったものを手に取る。
「外寒いから、これ、よかったら」
2本のマフラーのうち、バックパッカーが選んだのは、茶系の着物を引き締めるような黒いシンプルなものだ。
累はカラフルなマフラーを借りて、首にぐるぐる巻きにした。パッチワークみたいにつながったいろんな色が、着物と羽織の渋い濃紺と引き立て合う。