北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「累さんが持ってる服って、ときどきお洒落なものもありますよね」
「微妙な言いかただね」
「褒めてるんですよ。どういうところで買うんですか?」
「これは」累がリネンのシャツを見下ろしながら言う。「ごん……父親が太って着られなくなったやつ」
「ああ、そういうおさがり的な」
 納得しながらも、凛乃はほっとするのを自覚していた。
 衣服に頓着しない累が、時おり、累という素材を引き立てるハッとするようなセレクトをする。
 ワードローブに潜むそれは、買ってくれただれかを想像せずにいられなかった。
「見るなら凛乃の服を見ようよ。だいぶ減らしちゃったって言ってたし」
「んー、でも夏物はなんとか間に合ってるし、秋物には中途半端だし、あんまり購買意欲は湧かないんですよね。冬物は実家に送ってあるのを戻すつもりだし」
「アクセサリーは?」
 めずらしく累が食い下がってくる。
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