北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「買うなら、秋の終わりに友達の結婚式があるんで、それ用の服といっしょにコーディネイトしようかなと思ってるんですけど」
「ドレス買う?」
「いえ、華やかなワンピースとか、ちょっとしたパーティにも着られるとか言われがちな感じの」
「ホームパーティってこと?」
「たぶんそれじゃない、あれ? でもどうなんだろ。そういうホームパーティもありなのかな」
 イメージが混乱して腕組みした凛乃の腰を、累が押す。
「どういうのか見せて」
 促されるままレディースのファッションフロアに降りながら、凛乃の意識は腰にまわった手に集中する。
 累さんの動きってときどき、欧米なの? って言いたくなっちゃう。
 初めてのキス以来うすうす感じていたことが色濃くなったのは、駅ビルに入ってすぐ、エレベーターに乗ったときだ。
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