北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 4隅の柱に括り付けられていたカーテンを、すべて下ろす。それなりに光がさえぎられて、天蓋のなかはほどよく薄暗くなった。
 カーテン越しに、累がコートをハンガーにかけるシルエットが見える。
 凛乃が天蓋を飛び出すと、累はいつも通り淡々とした顔で空いているハンガーをよこした。
「とりあえず、お風呂のお湯、出してきたよ」
「ありがとう」
 わたしだけ舞い上がってるみたいじゃない?
 凛乃は口唇を尖らせながら自分のコートをハンガーに着せて、ラックにかけた。
「ジャケットちょうだい」
 次はこちらから手を差し出すと、累が凛乃の顔をしげしげと見つめた。
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