北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「いいの?」
「なにが?」
「着たままするほうがいいのかと思って」
「っ」
 顔じゅうに血を上らせて、凛乃は累に背を向けた。
「待ってっ、わたしがっ、いくらっ、スーツフェチだからって!」
「しない?」
 うなずくことはできなかった。考えたこともなかったけれど、いま想像してしまった。
「た……ただでさえスーツ姿はレアで、スーツ状態の累さんと外にいることはもっとレアで」
 雇用関係やら門限やら体調やら障害はまったくないって、もうとてつもなくレアで2度とないことでは?!
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