北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「はい、時間切れ」
 言うなり累が凛乃の腰を抱え上げた。
 凛乃が抗議という恥じらいの声を考え出す暇も与えない。カーテンを片手で払いのけ、やわらかいベッドに凛乃を下ろすや否や、上に覆いかぶさって息もできないようなキスを始めた。
 累さんも、いつもとちがう。
 爆発するようなうれしさが沸き上がるのを感じながら必死に息を継ぎ、凛乃はジャケットの緻密な織地に指を這わせた。
「凛乃はどうする? 着たまま?」
 首筋から下へ肌に触れようと苦戦していた累が、そこから手を離して尋ねた。
 カシュクールワンピースの開きすぎる胸元を隠すため、中にノースリーブのタートルネックを合わせている。たしかにどこから手を入れたらいいか、わからないかもしれない。かといって。
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