北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 薄く目を開けたら、累と目が合う。
 思わず視線を下げると、ふっと笑われた。
「服ばっかり見てる」
「ちがうの、累さんを見ると、自分も見られてるって、感じて」
 累が動くたびに目を閉じてしまい、また次の刺激で目を開ける。
 視線が定まらない凛乃を抱きすくめた累が、くるりと体勢を上下入れ替えた。
「りんの」
 誘われるように上半身を起こす。
 累の曲がったネクタイ、しどけなく乱れたベストやジャケットを見るともなしに見下ろして、ずきんと身体の芯がうずいた。
「んっ」
 累がたまらず声を漏らし、仕返しみたいに凛乃のあらわな胸をつかみあげた。
 反対の手はワンピースのスカートにもぐりこんで、腰を押しつける。
 凛乃はその腕をつかみ返し、激しくなってゆく波に合わせた。
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