北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「凛乃……いっしょに……いきたい」
 累のまなざしが熱い。
 これもプロポーズみたいだな。
 肌に食い込む指の強さも、こすれあうぬくもりも、かすれた声も、プロポーズに熱を添える。
 凛乃は何度もうなずく。
「うん……累さん……いっしょに」
 大輪の花のように広がったスカートの中で、密やかに約束が結ばれた。
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