北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
-O・MA・KE-
 
 解体されたベッドを運び出して家に戻ると、佐佑は洗面室に累を案内し、ともに汚れた手を洗った。
 荷物運びや猫の世話での貸しを、部屋の模様替えの手伝いで返してもらった。これから寝返りやハイハイを始める娘が、これでのびのびと動き回れる。
「助かったよ、ありがとな」
「ん」
「コーヒーでも飲んでいけよ」
「いい」
 すでに玄関でスニーカーに片足を突っ込んだ累が、首を振る。
「赤ちゃんのいる家に長居はよくないって凛乃が」
 佐佑は、ふむ、とうなずいた。
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