北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「維盛さんが言うんなら、そうしたほうがいいな」
 累は、こくり、とうなずいた。
 折しも部屋のほうから泣き声があがり、佐佑は引き寄せられるように身体を向ける。
「じゃあ」
 累は後ろ手に玄関ドアを開けて、隙間からぬるりと出ていく。
「あ、うん。ありがとね」
 礼もそこそこに、佐佑はリビングに向かう。
 おむつかな? おむつなら、替え終わったらミルクだな。
 がちゃっ、とまたドアが開く音がしてふりむく。
 累が顔だけ家の中に入れていた。
「あと、おれたち結婚するから」
「へっ」
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