北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「しっかりしてパパ、もう行くよ」
涙をぬぐう佐佑の腕をつかんで、妙子たちが控室を出て行った。
とたんに漂ってきた気恥ずかしさをごまかすように、言造がスマートフォンを差し出す。
「さっき撮ってもらったの見る?」
和装で収まっているのは、累たちはもちろん、両家の親もだ。言造のパートナーも、写真だけでもと留袖を着せてもらった。
カメラマンによるアルバム用写真を撮り終わったあとで、皆、肩の力が抜けた自然な笑顔を見せている。
言造がいっしょに画面を覗き込みながら、しみじみと息を吐いた。
「これで腕組んで歩くんだろ。いいなぁ、リンリンパパ」
「まだ言う」
2度目になる言造のおねだりを、累はたしなめた。
涙をぬぐう佐佑の腕をつかんで、妙子たちが控室を出て行った。
とたんに漂ってきた気恥ずかしさをごまかすように、言造がスマートフォンを差し出す。
「さっき撮ってもらったの見る?」
和装で収まっているのは、累たちはもちろん、両家の親もだ。言造のパートナーも、写真だけでもと留袖を着せてもらった。
カメラマンによるアルバム用写真を撮り終わったあとで、皆、肩の力が抜けた自然な笑顔を見せている。
言造がいっしょに画面を覗き込みながら、しみじみと息を吐いた。
「これで腕組んで歩くんだろ。いいなぁ、リンリンパパ」
「まだ言う」
2度目になる言造のおねだりを、累はたしなめた。